最終更新日 2026年10月14日
執筆者 代表取締役社長 五十嵐 康雄
来年度の職員研修計画、10月に決めるべき3つのこと
~ 予算要求の前に押さえたい設計の順番 ~
来年度の職員研修計画では、研修の一覧を作る前に「目的」「重点対象」「研修後の仕掛け」を整理することが重要です。
予算編成の時期は自治体によって異なりますが、秋の計画づくりに役立つ3つの判断を、総務省の指針と自治体の実践事例を交えて考えます。
――予算要求の前に押さえたい設計の順番
来年度の職員研修計画では、研修の一覧を作る前に「目的」「重点対象」「研修後の仕掛け」を整理することが重要です。
予算編成の時期は自治体によって異なりますが、秋の計画づくりに役立つ3つの判断を、総務省の指針と自治体の実践事例を交えて考えます。
来年度の職員研修計画を考える時期になりました。
自治体によって予算要求の日程は異なりますが、秋は多くの研修担当者にとって、翌年度の計画を具体化する大切な時期です。
この時期、まず手をつけたくなるのは「来年度はどの研修を、何回、誰を対象に実施するか」という一覧づくりではないでしょうか。
前年度の計画をもとに、アンケート結果を見て一部を入れ替え、新しいテーマを加える。それ自体が悪いわけではありません。
継続する価値のある研修も、もちろんあります。
ただ、研修の一覧から考え始めると、「何のために実施するのか」「職場でどんな変化を目指すのか」という問いが後回しになりやすくなります。
来年度の計画を固める前に、ぜひ確認したいのは「目的」「重点対象」「研修後の仕掛け」の3つです。
なぜ、予算要求の前に考えるのか
研修計画は、年度が始まってから自由に変更できるとは限りません。
予算要求、財政部門の査定、議会での予算審議などを経て、新年度の実施に向かいます。
具体的な日程や手続きは団体によって異なります。
予算要求の段階で「なぜ必要なのか」「誰に重点を置くのか」「効果をどう確かめるのか」を整理しておけば、研修の必要性を説明する材料になります。
一方、年度開始後に所属長の協力や数か月後のフォローを追加しようとしても、日程や事務負担の調整が難しくなる場合があります。
10月という時期そのものより大切なのは、各団体の予算編成スケジュールに合わせ、研修の前後を含む設計を早めに始めることです。
最初に確認したいのは、個々の研修テーマよりも「この計画を通じて、どんな職員の成長を支えたいのか」ということです。
その拠り所となるのが、各団体の人材育成基本方針です。
総務省は2023年12月22日、「人材育成・確保基本方針策定指針」を公表しました。
人材育成だけでなく、人材確保、職場環境の整備、デジタル人材の育成・確保を一体的に考える方向を示しています。
まずは、自団体の基本方針と来年度の研修計画を並べてみてください。
各研修が、目指す職員像のどの部分につながるのかを説明できるでしょうか。
たとえば新規採用職員のフォローアップは、仕事の基本を学ぶ機会であると同時に、職場への適応や定着を支える機会でもあります。
係長層の育成は、本人の能力開発にとどまらず、若手を支える職場づくりにも関わります。
研修名ではなく、目指す変化から計画を見直す。これが最初の判断です。
次に決めたいのは、来年度に重点を置く対象です。新人から管理職まで全階層に同じように手を広げれば、一見バランスのよい計画になります。
しかし予算も、職員が研修に参加できる時間も限られています。
「今、職場で最も困っているのはどの層の、どんな場面か」「昇任や異動によって役割が大きく変わるのは誰か」「昨年度の研修で、職場での変化を十分に確認できなかったものは何か」。
こうした問いから優先順位を考えてみます。
たとえば新たに主査・係長となる職員への支援を重点化するなら、他の研修をそのまま積み増すのではなく、実施方法の変更や縮小・休止も検討する必要があります。
新しい研修を増やすことだけが、研修計画の改善ではありません。「今年は何をやらないか」まで決めることで、重点が見えてきます。
3つ目は、研修後に学びを職場へつなげる方法を、計画の段階で決めておくことです。
研修直後の満足度アンケートだけでは、その後の行動や職場での活用まで把握できません。
ここで、実際の自治体の取組を2つ紹介します。
足利市役所では、新任主査を対象とするリーダースキルアップ研修で、研修の1か月後にフォローアップアンケートを実施しました。
研修当日に、後日振り返りを行うことをあらかじめ伝えていた点が特徴です。
研修担当者からは、職場での実践を意識するきっかけになり、後日のアンケートも目標を思い出す機会になった、との声が寄せられています。
これは担当者による実践上の所感であり、アンケートの追加だけで行動変容が実証されたという意味ではありません。
大きな仕組みを一度につくらなくても、研修後に振り返る機会を計画へ組み込むことはできます。
佐賀県では、一部の研修において、受講前に学びたいことを考え、研修後に実践計画を作成し、一定期間後に本人の自己評価や上司・所属長からのコメントを確認する取組が行われています。
また、研修の最後に「今日から実践すること」を小さなカードに書き、日常的に目に入る場所へ置く工夫も試みられています。
こうした取組は、研修で決めたことを職場で思い出すための仕掛けです。
いずれも、研修当日だけで完結させず、職場での実践を意識して設計している点が参考になります。
ただし、すべての研修に同じフォローを加える必要はありません。
まずは重点研修を1つ選び、研修後の確認時期、担当者、所属長の関わり方、必要な事務工数を決めておく。
それだけでも、計画は具体的になります。
研修後のフォローは、後から思いついた追加業務ではなく、最初から設計する業務です。
だからこそ、予算要求や年間計画をつくる段階で検討しておきたいのです。
すべてを自団体だけで抱え込む必要はありません。
都道府県や市町村職員向け研修機関の共同研修を活用したり、近隣団体と合同で実施したりする方法もあります。
外部研修を活用する一方で、自団体が重点的に担うのは受講前の目的共有や研修後の振り返りにする、といった役割分担も考えられます。
フォローアンケートのような比較的小さな取組でも、設問設計・集計・共有には一定の事務負担がかかります。
追加費用が少ないことと、担当者の負担がないことは別です。
共同で実施する部分と、自団体で担う部分を切り分けることも、研修計画の大切な設計です。
来年度の研修計画を見直すときは、研修の一覧を増減する前に、次の5点を確認してみてください。
□ 自団体の人材育成基本方針と研修計画のつながりを確認した
□ 各研修で目指す職員の変化を説明できる
□ 重点対象と、縮小・休止を検討する研修を整理した
□ 重点研修のフォロー時期・方法・関係者を決めた
□ 効果をどう確かめ、次年度の改善へどうつなぐかを考えた
研修計画は、「何を実施するか」の一覧表ではありません。
職員の成長と職場の変化に向けて、限られた資源をどう使うかという意思決定です。
来年度の計画を考える今だからこそ、「何をやるか」の前に「何のために、誰に、どんな変化を目指すか」を問い直してみませんか。
Q. 自治体の研修計画は、いつから準備すべきですか?
A. 各団体の予算編成日程に合わせ、予算要求の前に目的・重点対象・研修後のフォローを整理することを推奨します。
秋から予算要求が始まる団体では、10月が検討の目安になります。
Q. 「人材育成・確保基本方針策定指針」とは何ですか?
A. 総務省が2023年12月に公表した、地方公共団体が人材育成・確保の基本方針を検討する際の指針です。
人材育成、人材確保、職場環境、デジタル人材の育成・確保を一体的に捉えています。
Q. 研修後のフォローは何から始めればよいですか?
A. まず重点研修を1つ選び、1か月後などに実践を振り返る機会を設ける方法があります。
目的、実施時期、担当者、結果の活用方法まで決めておくことが大切です。
Q. 研修体系の見直しや研修前後の設計は外部に相談できますか?
A. 研修目的の整理、事前課題、フォローの設計、研修体系の見直しなどは、外部の専門家に相談できる領域です。
アイル・キャリアでも、各団体の課題に合わせた研修設計を支援しています。
関連サービス|来年度の職員研修計画・研修設計のご相談
「何を実施するか」だけでなく、「何を目指し、職場でどのような変化につなげるか」から研修計画を整理します。
研修体系の見直しや研修前後の設計、次年度の企画をご検討の際は、お気軽にご相談ください。
株式会社アイル・キャリア代表取締役。
2006年の創業以来、企業・自治体の人材育成に携わり、研修・人材開発の現場に立ち続けています。
自身も一つの研修との出会いによって人生が大きく変わった経験から、
「人には可能性がある」ことを人材育成の原点としてきました。
20年間の実践を通じてたどり着いたのは、学びを一過性のものにせず、
人と組織が変わり続けるためには、意志や熱意だけではなく「仕組み」が必要であるという考えです。
現在は、AI時代だからこそ大切にしたい人間らしさと、
一人ひとりの持ち味や可能性を活かす人材開発を追究しています。