自律型人材とは、自らの価値観や理念にもとづいて判断・行動ができる人材です。
環境が迅速に変化するVUCAの時代において、企業を成長させるために必要だと言われています。
この記事では、自律型人材の特徴やメリット、デメリットなどを解説します。
実際に、自社で育成する方法も紹介しますので、社員をマネジメントする立場にある方は、参考にしてください。
自律型人材とは、業務の目的や意義を理解し、自分の意思で臨機応変に行動できる人材です。
ただし、実際の業務や行動の目的は、企業によって異なるため、自律型人材の定義は一つではありません。
ビジネスシーンにおける自律型人材は、自ら仕事上の目標を設定し、仕事の価値や意義を見いだせる人材と言い換えられます。
ここでは、自律型人材の特徴について詳しく解説しますので、参考にしてください。
自律的に行動できる
自律型人材は、企業や上司からの指示を受けて行動するのではなく、会社に貢献するために何を行うべきかを自分で考えて行動できます。
また、目標達成に向けて必要な取り組みを自分で考えて理解したうえで、行動に移すため、
イレギュラーな状況やトラブルが発生しても臨機応変に対応できます。
自身の行動に責任を持てる
自律型人材は、自らの考えや価値観に従って行動するため、強い責任感を持って行動することができます。
業務上のミスやトラブルが発生した際にも、他者を責めることなく、自分自身の行動や判断を振り返り、改善策を考えます。
明確な意志や価値観を持っている
自律型人材は、仕事に対して明確な考えや価値観を持っているため、周りに合わせるのではなく「自分の軸」を持って行動できます。
また、自分自身の基準で物事を判断するため、前例や既存のやり方にとらわれず、柔軟な発想で独自の視点を提供してくれます。
既存の枠組みを疑い、新しい視点やアプローチを探ることで、他の人とは異なるユニークな視点を生み出しやすくなるのです。
自律型人材が組織内で協調しながら主体的に行動するのに対し、自立型人材は他者の助けなしに独立して行動できる人のことをいいます。
また、自律型人材は、目的や意義を考えて行動します。
一方で自立型人材は、独立した行動をできますが、目的や意義まで意識できているとは限りません。
企業が求めているのは、多くの場合、自立型人材よりも組織の目標達成に向けて自ら考え行動できる自律型人材なのです。
自律型人材が求められるようになった背景には、時代や働き方の変化が挙げられます。
ここでは、自律型人材が必要とされる背景について、詳しく解説します。
自律型人材が求められる背景としては、働き方の多様化が挙げられます。
新型コロナウイルス感染症が流行したことで、多くの企業でテレワークが導入されました。
加えて「フレックス制度」「時短勤務」など、働き方の多様化も進んでいます。
そこで、時間や場所にとらわれずに、主体的に行動できる自律型人材が求められるようになったのです。
昨今は「企業競争の激化」「顧客ニーズの複雑化と多様化」「IT技術の進展」など、変化の激しいVUCA時代です。
VUCA時代を企業が勝ち抜くには、組織の上層部だけではなく社員一人ひとりが市場の変化や課題に迅速に対応する必要があります。
そこで、市場の変化に対する適応力や行動力などを持つ自律型人材が求められるようになりました。
働き方改革で終身雇用や年功序列制度ではなく、成果にもとづいた評価制度を導入する企業が増えました。そのため、幅広く汎用的なスキルを身につけた社員よりも、自律的に習得した専門的なスキルや知識を現場で発揮できる人材に注目が置かれるようになりました。
つまり、会社に依存することなく自らスキルUPを図り、積極的にキャリアを構築できる自律型人材が求められていると言えます。
自律型人材がより活躍するには、組織のあり方も重要です。ここでは、自律型人材が活躍しやすい組織形態について解説します。
ティール組織は、自律型人材が活躍できる理想的な組織形態の一つです。
主な特徴は、社長や上司がマネジメントを行わずに、全てのメンバーが対等な立場で働くことです。
また、マイクロマネジメントが行われないため、メンバー自身が自己管理・自己決定をするのがティール組織です。
このような組織は、目的意識を持って主体的に行動できる自律型人材との相性が良いといえます。
ホラクラシー型組織とは、役職や階級が存在しないフラットな組織形態を指します。
上司に多くの権限が与えられる従来のヒエラルキー組織とは異なり、意思決定権が組織内の個々人やチームに分散されます。
ここでは、自社で自律型人材を育成する際のポイントを解説します。
紹介するポイントを意識しながら、自社に合った自律型人材を育成していきましょう。
自律型人材の定義は企業によって異なるため、まずは自社の特性や目標に合わせて、明確に定義することが重要です。
まずは、自社の経営戦略や目標達成に必要な人材像を考え、その人材に求める具体的な行動や能力を明確にすると良いでしょう。
明確な定義を設けることにより、組織全体で会社が求める人物像を把握できるため、個々の社員が自ら理想の社員像に向けて成長するために行動を起こしやすくなります。
自社で自律型人材を育成するためには、失敗を恐れずに発言や行動ができる環境づくりが大事です。
例えば、上司が部下に積極的に意見やアイデアを求めてそれを認めることで、社員が自律的に考える力を伸ばせる環境づくりに繋がるでしょう。
また、書籍購入費用の補助や研修・外部セミナー受講費の負担など、社員の自律的な学びに対する意欲を無駄にしない仕組み作りも重要です。
1on1ミーティングを活用して、社員が感じている不安や課題を解消することで、自律型人材の育成を効率良く進めることに繋がります。
1on1ミーティングでは、上司が部下に合わせたコーチングやフィードバックをすることで、自律に向けたサポートを行います。
それにより、社員は自らの考えを自主的に言語化できるようになります。
さらに、定期的に話す機会を設けることは、上司と部下の信頼関係の向上にも繋がります。
自社で自律型人材を育成する際の重要なポイントとして、会社の理念やビジョンを浸透させることも挙げられます。
自律型人材は、企業にとって最良な行動を能動的に取ることができます。
すなわち、自律型人材の育成には、企業の経営理念や戦略に関する従業員の理解が必須です。
例えば、全体会議やチームミーティング、社内報などで、定期的に理念・ビジョン・経営陣の考えを共有する機会を設けると良いでしょう。
会社の理念やビジョンを浸透させたうえで、自律型人材の育成を進めてみてください。
定期的に評価やフィードバックを実施する機会を作ることも、自律した人材の育成に繋がります。
社員一人ひとりに定期的な振り返りの機会を設け、それに対してフィードバックと評価を行います。
社員はフィードバックに応じて行動し、これらを繰り返すことにより、社員の成長を加速させられるでしょう。
ただし、すぐに結果が出るわけではなく、中長期的な視点で成長をサポートすることが大事です。
もし既存の制度が自社に合っていないと感じるなら、見直しを検討してみてください。
ここでは、企業が自律型人材を育成するメリットを解説します。自社に自律型人材が必要かどうかを判断する参考にしてください。
企業が自律型人材を育成するメリットとして、業務効率化で組織の生産性が向上する点が挙げられます。
会社にとって最良の選択を自ら考えて選択できるのが、自律型人材の強みです。
自己判断ができるため効率的な業務遂行が可能で、結果的に組織の生産性が向上します。
また、自律型人材なら業務の中でトラブルや課題に直面した際でも、自ら解決策を考え出して、迅速な対応ができるでしょう。
企業が自律型人材の育成を進めることで、多様な働き方に対応できる組織作りが可能です。
実際に、2020年に起こった新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、働き方の多様化が進みました。
しかし社員の自己管理力や判断力が低いまま働き方が多様化してしまうと、上司からの細かな指示が届きにくくなる分、かえって業務が滞ってしまう危険性があります。
その点自律型人材なら、テレワークやフルリモートでも自ら効率の良い働き方を考えながら業務を進められるため、企業全体の生産性だけではなく柔軟性も向上させられるでしょう。
企業が自律型人材の育成に向けた施策を導入することで、社員一人ひとりに、独自性のあるアイデアを考える力が身に付きやすくなります。
なぜなら、指示待ち人材は、与えられた範囲内の行動しかできませんが、自律型人材は自主的に考えて行動できるからです。
また、自分の発想やスキルを仕事に適用できる自律型人材には、会社をより良くするアイデアの創出も可能です。
そのため、前例や既存のやり方にとらわれない柔軟な思考で、VUCA時代に対応できる商品やサービスの開発にも期待できるでしょう。
自律型人材の育成は、企業にとってメリットだけではなくデメリットもあります。
デメリットを理解したうえで、自社で育成を始めるか検討してください。
企業が自律型人材を育成するデメリットとして、育成に手間と時間がかかる点が挙げられます。
自律型人材となるためには、さまざまなスキルや要素を身につける必要があり、適切な研修プログラムの実施に手間と費用がかかります。
また、各社員のバックグラウンドや適性は異なるため、一時的なアプローチではなく、個別に長期的な育成を継続して行わなければいけません。
そのため、育成担当者の負担が増加してしまいます。
自律型人材の育成は、チーム活動に以下のような支障をきたす可能性があります。
自律型人材を多く抱えると、自身で考えて業務を進める半面、コミュニケーション機会の損失や方向性の不一致によって、統率が取れない組織になりかねません。
自律型人材の育成においては、個人の自律性とチームの協調性のバランスを取ることが大事です。
ここでは、実際に自律型人材の育成を実施した企業の事例を紹介します。自社で行う際の参考にしてください。
株式会社富士通マーケティングでは、与えられた業務を遂行するだけではなく、自ら課題を発見し、主体的に解決策を考えられるスキルを磨くための研修を実施しました。
具体的な内容は、以下のとおりです。
研修の結果、自ら考える力と周りを巻き込むリーダーシップ力が身につき、主体性を発揮できる自律型人材の育成に成功しています。
ヤマハ株式会社は、新たな視点で今後のキャリアを考え、成長する機会を作るための研修を実施しました。安定志向ではなく上昇志向で、変化の激しいVUCA時代に対応し、自ら未来を切り開いてほしいとの思いが大きな理由です。
研修の結果、今後のキャリア目標に自信を持ち、モチベーション高く積極的に取り組める人材の育成に成功しています。
自律型人材の育成は、組織全体の成長に加えて、社員のキャリア支援にも効果的な取り組みだと言えるでしょう。
NTTテクノクロス株式会社は、社員自らが自由にテーマを選んで学習できるよう「選択型研修」を導入しました。
従来の社内研修を見直して、社員の能動的な学習を勧めることが目的です。
その結果、社員自身がキャリアについて考え、必要な知識やスキルに紐づく研修を選ぶようになりました。
さらに、同じテーマに興味を持つ異なる部署の社員が集まることで、社内コミュニケーションの活性化にも成功しています。
この記事では、自律型人材を育成する際のポイントや、企業におけるメリット・デメリットを紹介しました。
自律型人材は、市場の変化が激しいVUCA時代において、企業を成長させるために必要だと言えます。
ただし、自律型人材を正しく定義できていない、自社の理念やビジョンが浸透していない状況では、
企業にとってメリットを見出せない可能性もあります。
本記事で紹介した育成のポイントを意識しながら、自社に合った自律型人材を育成していきましょう。
株式会社アイルキャリアは、お客様ごとに抱える課題や目標に合わせたオーダーメイドプログラムで”学び”を提供する研修会社です。官公庁・自治体から上場企業、医療法人や学校法人まで様々なお客様に対して、ご要望と時流をふまえた必要な”学び”を、新人から管理職まで幅広く提供し、組織の人材育成を支援しております。特徴としては、その研修で達成したい目標(行動変容)の先にある成果、パフォーマンス(行動変容の結果得らえるもの)までを意識してプログラムを作成することにあります。