リモートワークの一般化に伴い、職場出社と同じように時間管理ができないことに悩んでいる経営者も少なくありません。今回はリモートワークの時間管理を怠ることによって発生するリスクやトラブルを紹介しながら、リモートワークでも対応できる時間管理方法を解説します。
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
厚生労働省が発表した「テレワークを活用する企業・労働者の皆さまへ テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」によると、「労働時間の管理が難しい」ことは企業側が抱えるテレワークのデメリットの1位にランクインしています。しかし、リモートワークであっても職場出社と同様に勤怠管理が必要です。勤怠管理を適切に行わないと下記のようなリスクが想定されます。
また、同じく2017年に厚生労働省が発表した「労働時間の適正な把握のための使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によると、企業は全ての労働者の労働時間の記録を徹底するように義務付けられています。そのため、経営層はリモートワークで従業員がサボタージュすることを心配する以上に、サービス残業などの法的リスクに注意することが必要です。
リモートワークの時間管理を行う際に発生するトラブルは、主に下記の4つです。
リモートワークは職場出勤と比較すると、「オフィス」という同じ場所で働いていないため従業員の一挙手一投足まで管理することはできません。そのため、時間管理を社員の裁量に任せ、Excelや勤怠管理ソフトなどに従業員が自己申告制で始業時刻・就業時刻・休憩時間などを入力する形式で労働時間を管理している企業が多いです。
しかし、自己申告制の場合は、周囲に遠慮して残業時間を申告しないなど虚偽の申告が起こるケースもあるため、従業員の労働時間を正確に把握するための方法としてはふさわしいとは言えないでしょう。
オフィスで仕事をする場合は、通勤や業務中の外出の際に私用を済ませることができます。しかし、リモートワークで外出する機会が減ってしまうと、用事を済ませることが難しくなってきます。そのため、リモートワークを導入すると「中抜け」のニーズが高まるでしょう。「中抜け」の時間ができると、仕事の合間であっても私用で抜けることが可能になります。
従業員の福利厚生の面では極めてメリットがありますが、私用での中抜けの時間は規定以上の休み時間になってしまうこともあるため、申告してもらうシステムを構築することが必要です。
日本労働組合総連合会が2020年に発表した「テレワークに関する調査2020」によると、全回答者の半数以上にあたる51.5%がリモートワーク中は通常の勤務よりも長時間労働になることがあったと回答したようです。自宅で仕事を行うと、業務とプライベートの境目が曖昧になり、ついつい労働時間が伸びてしまう傾向があります。
また、同調査で回答者の38.1%がテレワーク中に残業代支払い対象の時間外・休日労働があったにも関わらず、そのうちの65.1%が申告しなかったこともあると回答していたようです。申告をしなかった理由の主な理由は「申告しづらい雰囲気があった」「時間管理がされていない」となっています。従業員が残業の申請をしやすい雰囲気を作り、どこまで残業時間を認めるのか事前に確認するようにしましょう。
大和総研が2019年に発表した「介護離職の現状と課題」によると、2017年には介護を理由に退職した人はおよそ9万人にも上り、2007年と比較し2倍にも増加しています。少子高齢化が進む日本において、介護と仕事の両立は今後ますます深刻な社会問題となるでしょう。このような背景から、親の介護をしながら仕事ができるようにリモートワークを認めている企業が増えています。しかし、下記の理由より、介護を伴うリモートワークの時間管理はかなり難しいです。
従業員が介護と仕事を両立できるようなリモートワークの環境を整えておくことが大切です。
前章では、リモートワークで発生する時間管理の問題について紹介しました。リモートワークで働く従業員の労働時間をしっかりと管理するためにおすすめの方法を3つ紹介します。
勤怠管理システムを導入することで従業員の労働時間を正確に把握できるようになりますが、導入や運用に多大なコストがかかるため全ての企業が導入するのは難しいでしょう。勤怠管理システムの導入が難しい場合は、メールをタイムカードの代わりにすることで対応できます。メールであれば普段から使い慣れている従業員も多いため、リモートワークに慣れていない従業員や、新しいシステムの使い方を覚えるための時間を取れない管理職の人でも使いやすいでしょう。
チャットのアクティビティログを使って勤怠を把握できます。また、自動で勤怠を確認してくれるため、リモートワークとの相性が良いと言えるでしょう。営業や人事など、人と関わることが多い業種や職種、あるいはチャットアプリやWeb会議を活用している企業におすすめの勤怠管理方法です。
ただし、あまり細かい点にまで指導を入れると社員のモチベーションの低下に繋がるリスクがあります。行きすぎた業務怠慢にのみ声をかけるなど工夫をして活用しましょう。
パソコンやスマートフォンなどの端末でどこからでも打刻できるネットワークタイムレコーダーであれば、リアルタイムかつ正確な打刻時刻が把握できるため、客観的な勤怠管理を実現することが可能です。このシステムは、テレワークやリモートワークを導入している企業だけでなく、オフィスでの勤務で直行直帰や現場での作業が多い企業でも多く取り入れられています。
これまで職場での直接目視による勤怠管理が当たり前だった人からすると、リモートワークでの勤怠管理は従来の方法とは大きく異なるため困惑するものです。とはいえリモートワークには、通勤時間の疲労を軽減したり、オフィスにかかる賃料や電気代などの節約を可能にしたりとさまざまなメリットもあります。
この記事では、勤怠管理システムを導入する方法以外に、企業ができるリモートワークの労働時間を管理するための方法を3つ紹介しました。 これらの方法も活用しつつ、オフィスへの出社勤務とリモートワーク勤務のバランスや自社に合うワークスタイルの確立が望まれるのではないでしょうか。
株式会社アイルキャリアは、お客様ごとに抱える課題や目標に合わせたオーダーメイドプログラムで”学び”を提供する研修会社です。官公庁・自治体から上場企業、医療法人や学校法人まで様々なお客様に対して、ご要望と時流をふまえた必要な”学び”を、新人から管理職まで幅広く提供し、組織の人材育成を支援しております。特徴としては、その研修で達成したい目標(行動変容)の先にある成果、パフォーマンス(行動変容の結果得らえるもの)までを意識してプログラムを作成することにあります。