「キャリアプランニング」と聞いてもその内容が何か分からない、という方は多いのではないでしょうか。キャリアプランニングは、将来の目標達成への道筋を描く重要なプロセスです。この記事では、そのメリットや重要性、具体的な実施方法をわかりやすく解説します。自身のキャリアを充実させるための第一歩を、ここから始めましょう。
キャリアプランニングとは、端的に言うと自分自身の仕事を含めたライフプランを計画することを指します。現在取り組んでいる業務や仕事を軸にしながら、将来歩んでいきたいキャリアについて考えて計画し、実現させることを目指します。転職を考えている人だけに必要なことのように思われるかもしれませんが、働いている人であれば、誰にとっても重要なことです。
現在は、多くの企業でキャリアプランニングに対する注目度が高まっています。
キャリアプランニングによって、自分の理想とする姿や目標を実現するために何をすべきかが明確になります。そのことが、働くためのモチベーションにも繋がります。
「キャリアプランニング」とは、他人から与えられたり決められたりするものではありません。自分自身がどう成長していきたいのか、あるいはどのような未来を作り上げたいのかといったことについて、自身で能動的に考えて描くものです。労働市場や雇用を取り巻く環境が大きく変化する今、自らのキャリアは、自ら考えることが求められています。
「キャリアプランニング」と似たような意味を持つ言葉として、「キャリアビジョン」があります。「キャリアビジョン」とは、人生や仕事において将来なりたいと考える「理想像」のことです。それに対して、「キャリアプランニング」とは、現実的に達成できる目標について考えて、その目標を達成するための「計画」を立てることを指します。
キャリアプランニングを企業が支援するメリットは、おもに、以下3つです。
従業員個人のキャリアプランニングを組織が支援することで、個々が目指すキャリアプランに合わせた人材育成計画(配属や教育研修)を立てやすくなります。また、従業員も自身の希望に合わせて教育を受けられるため、モチベーションを高く保ちながら業務にあたれます。
従業員がキャリアプランニングを行うことで、ひとり一人のモチベーションやスキルが高まることが期待できます。それは、結果的に企業の生産性や顧客へのサービスの質向上にも繋がるでしょう。
各従業員が明確な目標を持ち、これまで以上に真剣に業務に取り組むことで、ひとり一人の成長の促進に繋がることが期待できるでしょう。そして、従業員個々の成長は、組織力強化に繋がり、事業の拡大や新規事業の創出にも繋がります。
次に、キャリアプランニングを実施する際にチェックすべきポイントについて説明します。下記3点に気をつけながら作成してください。
キャリアプランを作成する際は、まず、自分自身の過去の経験から身につけた能力、スキル、あるいは、価値観に合うかどうかを意識することが大切です。「自分の過去の経験」を意識せずにプランニングしてしまうと、自分が提供できる価値と市場のニーズの間にズレが生じてしまい、思い描いたキャリアを歩めなくなってしまうリスクが高まります。キャリアプランは、一度作成したら終わりではありませんが、これまでの経験を無視して作成しないように注意することが必要です。
当たり前のような話ですが、キャリアプランを作成する際は、従業員ひとり一人が望むキャリアをおぼろげながらでもイメージしながら進めることが大切です。本人が望んでいないキャリアプランは達成率も低く、得られることが少ないからです。
「どのようなキャリアを歩んでいきたいのか?」「いつまでにどうなりたいのか?」を整理してキャリアプランニングを実施しましょう。適性の有無については適性診断などを活用し、その結果やアドバイスも参考にすることがおすすめです。
実現したいキャリアであったとしても、あまりにも難易度が高く実現性が低そうな場合は、見直すことが必要です。あまりにも目標までの道のりが険しすぎると、モチベーションが低下したり、自信を失ってしまったりすることに繋がる恐れがあります。
このようなリスクを回避するために、従業員が作成したキャリアプランは、人事や上司との面談などでチェックすることがおすすめです。
次に、キャリアプランニング実施方法について解説します。
キャリアプランニングを実施する場合は、人事部門から全社的に通達することがおすすめです。また、各部門でも全ての従業員に正式な依頼として出しましょう。通達に関しては、年に1回、あるいは、半年に1回程度が望ましいです。通達は、単にキャリアプランニング実施を連絡するだけでなく、その意義や目的、入力フォームの書き方など全体像と詳細までを伝達することで、従業員のキャリアプラン作成に対するハードルが下がります。
また、キャリアプランニングに使用するシートやツールは事前に準備しておきましょう。従業員による自由記述ではなく、入力シートやWebの入力フォームを作成するなど社内で統一したものを準備しておくことが必要です。
次に、従業員に下記の視点を踏まえて、自身のキャリアの棚卸しを行ってもらいます。
棚卸しは成功体験だけでなく、失敗体験やミスしたときのことも含めて全て棚卸しすることが大切です。
また、上司や同僚など周囲の人の意見を参考にすることもおすすめします。社内でキャリアプランを実施する場合は、従業員が作成したキャリアプランを上司との面談で活用し、双方の考えや希望を擦り合わせる機会を設けましょう。作成したキャリアプランを本人の役割や会社からの期待と重ね合わせることで、仕事に対する意味づけが進み、本来の力を発揮しやすくなります。
なお、キャリアプランニングの実施によって、社員が社外流出するリスクがあるのではないかと不安に感じることがあるかもしれません。実際に、そういったことが起こるリスクはあるかもしれませんが、一方で、上司と部下がキャリアプランについて話す習慣を持つことで、互いの信頼関係がより深まったり、エンゲージメントが高まる可能性もあります。リスクについて、あまり深刻に考えすぎないようにしてください。
■キャリアの棚卸しの詳しい内容はこちら
人事部門やキャリアコンサルタントなどの専門家が従業員と個別に面談できる機会を設けるようにしましょう。面談を実施してフィードバックする際は、従業員が作成したキャリアプランを尊重する姿勢を持つことが大切です。実際に、企業がひとり一人の従業員のキャリアに関する要望すべてに応えることは不可能であったとしても、従業員の価値観やはたらく動機に関して企業が対話する場をもつことは、雇用の流動化が進む今の時代には大きな意味があります。
次に、キャリアプランシートの作成方法について説明します。
まずは、現状を理解することから始めます。下記のことについて言語化してください。
これらのことについて考える際には、現在の職業や業種にとらわれすぎないことが大切です。また、他人と比較し過ぎないことも大切です。
次に、なりたい将来像について考えます。従来は、5年、10年単位で考えることがおすすめでしたが、変化の今の時代においては、1~2年といったより短期で考えることが必要となってきました。いずれにしても、なりたい将来像の言語化は、自身の価値観や興味関心をベースに行うことが重要です。
なりたい将来像を実現するために必要なスキル・能力・経験や、それらを身につけるためにやるべきことを具体的に計画します。VUCAの時代といわれるこの時代においては、1~2年といった短めのスパンで考えることが鍵になってきました。
具体的なポイントとしては、近未来は具体的な内容とし、遠い将来は、おおまかな方向性だけ立てておいて随時見直すなど、遠近両用で柔軟にプランニングすることが肝となります。
キャリアプランを作成する際、特に、短期的な目標については、頑張れば手が届くようなスケジュールにすることが大切です。中長期的なキャリアプランを作成する際は、状況に応じて柔軟に修正できるよう心積もりしておくことも大切です。これらの理由により、キャリアプランは一度作成したら終わりではなく、定期、不定期見直し、振り返る時間を意識的に取るよう心がけましょう。
繰り返しになりますが、場合によっては、大きな方向転換を余儀なくされることもあるかもしれないという心の準備が、今の時代にキャリアプラン作成する際、必要となることです。
最後に、キャリアプランニングの企業活用事例について紹介します。
キャリアプランニングを通じて、従業員の希望に沿った人事異動や業務指示も可能となることがあります。例えば、管理職になりたいと考える従業員に対して、営業や経営管理業務などの経験を積ませ、マネジメント経験を早期に積ませることなどです。専門職を希望する従業員には、専門技術を習得できる部門に長く在籍させ、さまざまな経験を積ませ、活躍の場を提供することができます。
従業員が望むキャリアプランを加味した業務配置や人事異動は、従業員の仕事に対するモチベーションやエンゲージメントの向上につながるでしょう。
キャリアプランニングの実施によって、従業員が望むキャリアプランの傾向を把握することも可能となります。全体の傾向を把握できれば、会社が抱えている課題や取り入れるべき制度なども可視化できるようになるでしょう。
例えば、従業員の多くが育児や介護に課題を抱えていると把握できた場合、仕事と家庭の両立を実現しやすい人事制度を導入したり、福利厚生制度を充実させたりすることで、社員の定着率を上げ、中長期的な視点で社員の活躍を支援することも可能となります。
この記事ではキャリアプランニングの意味、重要性、メリット、そして実施方法について解説しました。今の時代において、キャリアプランニングは企業と従業員それぞれにとって必要不可欠な取り組みであると言えます。
特に、企業が従業員のキャリアプランニングを支援することは、企業にとっても非常に多くのメリットがあることがお分かりいただけたと思います。積極的な支援は、選ばれる組織の要素のひとつなのかも知れません。
株式会社アイルキャリアは、お客様ごとに抱える課題や目標に合わせたオーダーメイドプログラムで”学び”を提供する研修会社です。官公庁・自治体から上場企業、医療法人や学校法人まで様々なお客様に対して、ご要望と時流をふまえた必要な”学び”を、新人から管理職まで幅広く提供し、組織の人材育成を支援しております。特徴としては、その研修で達成したい目標(行動変容)の先にある成果、パフォーマンス(行動変容の結果得らえるもの)までを意識してプログラムを作成することにあります。