「キャリアの棚卸し」とは、キャリアを考える際によく耳にする言葉です。一方で、具体的にどのような内容なのか、どのような手順で進めれば良いのか分からないという方もいるのではないでしょうか。そこで、本記事では、「キャリアの棚卸し」の具体的な手順に加え、その効果まで詳しく説明します。
労働市場や雇用環境の変化が激しい昨今、働く人ひとり一人が、自身の「キャリアビジョン」や「キャリアプラン」を考えることの重要性が高まってきました。キャリアビジョンやキャリアプランを考える際には、キャリアを棚卸しすることが必要です。
まずは、キャリアの棚卸しの定義やその目的、自己分析との違いについて理解しましょう。
キャリアの棚卸しとは、これまでのキャリアを振り返って自分の経験や獲得したスキル、能力、そして自身の成長などを確認することをいいます。特別なプロジェクトの仕事内容や成果だけでなく、可能な限り普段の業務も含めて経験を洗い出すことがポイントです。
また、業務内容だけでなく、どのような姿勢で取り組んだのか、どのような結果をもたらしたのかといったことまで深掘りして書き出してみてください。自分自身の強みや課題、適性のある仕事、大切にしている価値観などが徐々に浮き彫りになっていきます。
キャリアの棚卸しをする目的は、おもに、以下2つのものがあります。
これまでのキャリアを振り返ることにより、自分の強みをどう磨き、今後のキャリアでどう伸ばし、どのように活かしていけるかを考えることが大切です。
キャリアの棚卸しは、これまでの経験を振り返り「自分にできることは何か」、あるいは「自分は、どんなことにやりがいを感じるのか」などを整理することにあります。それに対して、自己分析は、キャリアの棚卸しを通じて得られた内容をもとに、自分の強みや、やりたいことなどを明らかにしていくものとなります。つまり、キャリアの棚卸しは、自己分析の前段階に行うことで、自己分析をするには、あらかじめキャリアの棚卸しをしっかりと行っておくことが必要なのです。
「キャリアの棚卸し」は、就職、転職活動時に行うものというイメージを持たれている方もいるかも知れませんが、実はそうではありません。就職や転職活動時だけでなく、現在の仕事における自身の長期的なキャリアデザインやキャリアプランを設計する際にも役立つことなのです。そのため、働く人全員が行うべきことであると言えるでしょう。
キャリアの棚卸しをすることのメリットには、以下のようなものがあります。
これまで経験してきた仕事内容について、イベント的なものから日常的に行ってきたものまでを可能な限り振り返ることで、どのような仕事で成果を挙げられたのか、どのような仕事を円滑に進められたかなどが理解できます。そこから自身の強みが言語化できるようになり、今後、その強みを伸ばしたり活かしたりする道筋が立てやすくなります。
自身の強みを理解できれば、社内でより自分が大きく貢献できる仕事はどのようなものなのかを考えられるようになります。強みを活かした仕事を行った結果、成果を上げることに繋がれば、社内での評価もさらに高まり、望んだキャリアパスが手に入るチャンスが広がります。そういった意味からすれば、今後のキャリアプランを立てる際にもキャリアの棚卸しは役に立つと言えるでしょう。
日々なんとなく仕事に取り組んでいたとしても、自分の強みを知ることで、自分の支えや拠り所を感じ、自信を持って仕事に打ち込めるようになります。結果、仕事の質、成果にもポジティブな影響を与え、それがまた、自信に繋がるという好循環を生み出すことに繋がります。
キャリアが3年未満で、まだ社会人経験が少ない方は、下記のステップを踏んでキャリアの棚卸しをしてみましょう。
キャリアが3年未満で、まだ社会人経験が少ない方は、下記のステップを踏んでキャリアの棚卸しをしてみましょう。
STEP1:「自分は今、仕事で何ができるか?」を考える
まずは、これまで自分が行ってきた業務内容を洗い出しましょう。その際、業務の大枠だけでなく、出来るだけ仕事の細部まで洗い出すことがポイントです。経験やキャリアが浅くても、日々の仕事への取り組み姿勢や成果などから、身についたスキルや知識、強みが探れるからです。たとえば、事務仕事などを担当していて、数字など目に見える形で成果がつかめない場合でも、「顧客や上司、先輩などから作成した資料が分かりやすい」と褒められた経験も強みの根拠となり得ます。他にも、営業担当者のサポート業務をしていて、営業担当者が成績を上げることができた場合などは、何らかの形で貢献している可能性が考えられます。このように、3年未満の短いキャリアの方でも、やり方によって十分強みを書き出せます。
STEP2:出てきたスキル・知識に対して、「好きか・嫌いか」を考える
STEP1のプロセスで明らかになってきたスキルや知識を「やりがいを感じたこと」「やりがいを感じられなかったこと」、あるいは「好きなこと」「嫌いなこと」に分けてみましょう。
STEP3:「その先の未来に何があるのか」を探究する
STEP2までの内容を踏まえて、これから先の未来にどのようなビジョンを描けるのか探究していきます。たとえば、営業職で顧客が購入した商品・サービスの価値を喜ぶ声を耳にすることにやりがいを感じる場合、将来的には、営業職を統括する管理職を目指すより、商品やサービスの企画、開発に携わることを視野に入れるといったイメージです。
次に、キャリアが3年以上で、社会人経験をある程度積んだ方は、下記ステップを踏んでキャリアの棚卸しを行ってみましょう。
STEP1:「今の仕事について1日の業務を書き出す」
社会人になってから今日まで行ってきた仕事や業務内容を、時系列を追ってまとめてみましょう。イメージとしては、自分史の年表を作成するような感じです。
はじめは、なかなか思い出せず書き出せないこともあるかと思いますが、やっているうちに「こんな仕事も経験した」「あんな業務にも携わった…」など色々と思い出せるようになるでしょう。そのようなプロセスの中で、感情と紐づいた記憶が蘇り、自分では気づかなかった強みや長所が見えてくることもあります。
STEP2:「仕事の実績や工夫したことを書き出す」
STEP1で作成した自分史に、下記の内容を追記しましょう。
仕事内容/役割
その業務を通じて身につけたことや学んだこと
その業務に取り組む際に心がけたことや工夫したこと
その業務によってもたらされた実績や業績
その業務で苦労したことや失敗したこと、そしてどう乗り越えたのか
失敗した場合は、なぜ失敗したのか、その失敗から学んだこと など
STEP3:「新卒で就職した時まで遡って繰り返す」
上記STEP1とSTEP2のサイクルを新卒で入社した時まで遡って繰り返します。この際、新入社員の頃に感じていた気持ちや、夢や目標とといったことも振り返ってみてください。何かヒントになることが見つかる可能性があります。
STEP4:「書き出した項目を一覧にまとめる」
次に、STEP1からSTEP3をExcelなどを使って一覧表にまとめましょう。一般的なキャリアの棚卸のフォーマットでも良いですし、たとえば、横軸に「洗い出した項目」、縦軸に「時系列」といった感じで整理するのでも良いでしょう。ポイントは、過去と現在を見比べることができるような構図であることです。
STEP5:「特徴的な強みとそれを証明するエピソードをピックアップする」
STEP4のキャリアの棚卸し表を完成させたら、全体を俯瞰して自分の強みは何であるのかを考えます。そして、自分の強みが見えてきたら、その強みを裏付けるエピソードをピックアップしてください。これは、強みを腹落ちさせるための重要な根拠になります。とはいえ、一人で行っても難しいこともありますので、その場合は、誰か信頼できる人に聞いてもらってフィードバックをもらうと良いでしょう。
強みに加えて、自分の思考や行動パターンについて理解出来れば大成功です。
キャリアの棚卸しを行う際には、下記2点に注意するよう心がけましょう。
キャリアの棚卸しをする際には、業務内容やその結果を記入するだけでは不十分です。当時の気持ちやプロセスといった詳細まで踏み込んで記入しましょう。
キャリアの棚卸しは、一度行ったら終わりでなく、定期、不定期、繰り返し行うことでより深い自己理解をもたらします。なぜなら、世の中も社内での仕事や役割も、そしてライフステージもどんどん変化していくからです。
キャリアの棚卸しを何かの節目だけでも行うようになっていれば、自身の変化や成長を言語化することも容易となり、結果、自信やモチベーションの向上にもプラスとなります。
この記事では、キャリアの棚卸しの具体的な手順と、その効果について詳しく解説しました。
繰り返しになりますが、キャリアの棚卸しは働く人すべてに必要なものと言えます。キャリアの棚卸しを通じて自己理解を深め、自分の活かし方が上手くなることで自信やモチベーションにもつながります。
転職や独立の予定がなくても、充実したキャリアを歩むために、ぜひキャリアの棚卸しを効果的に活用してみてください。
株式会社アイルキャリアは、お客様ごとに抱える課題や目標に合わせたオーダーメイドプログラムで”学び”を提供する研修会社です。官公庁・自治体から上場企業、医療法人や学校法人まで様々なお客様に対して、ご要望と時流をふまえた必要な”学び”を、新人から管理職まで幅広く提供し、組織の人材育成を支援しております。特徴としては、その研修で達成したい目標(行動変容)の先にある成果、パフォーマンス(行動変容の結果得らえるもの)までを意識してプログラムを作成することにあります。