近年、組織内で人材育成に携わる人の間で「Z世代の育成方法がわからない」「指導方法を誤って辞められたら困る」など、悩む声が多く聞かれます。世代間ギャップはどの世代にもあることですが、Z世代は、それ以前の世代とは価値観がまったく異なると言われています。
この記事では、Z世代の特徴や効果的な育成方法、NGな指導方法などを紹介しますので、Z世代を教育、育成する立場にある方はぜひ参考にしてください。
Z世代とは、一般的に1990年〜2010年あたりに生まれた人たちを指す言葉です。2024年現在でいえば、10代前半〜25歳以下の若い世代を指します。
また、デジタル化が進んでいた時代に生まれたことから「デジタルネイティブ」と呼ばれるケースもあります。Z世代は、これまでの世代とまったく異なる価値観を持っているため、30代後半以上の人にとっては打ち解けにくい、教育しづらい世代だと言えるでしょう。
ミレニアル世代とZ世代を混同してしまう方が多いと感じています。Z世代が1990年〜2010年あたりに生まれた人たちであることに対して、ミレニアル世代とは1980年~1990年に生まれた世代を指す言葉です。
好景気・不景気の両方を経験しているミレニアル世代は「理想主義」、日本経済が停滞していた頃に幼少期を過ごしたZ世代は「現実主義」と区別されるケースもあります。
理想主義であるミレニアル世代は、商品やサービスに対してどのような体験ができるのかという「顧客体験」を重視します。一方、現実主義であるZ世代は安心して使えるのか、節約につながるのかといった機能性やコストパフォーマンスなど「実用性」を重視する傾向が強いようです。
また、ミレニアル世代とZ世代のどちらもSNSとの親和性は高いのですが、Z世代はネット上でのいじめや炎上を見る機会が多く、よりリスクを理解しています。そのため、ミレニアル世代はSNSで多くの人と共有したがる人が多く、Z世代はコミュニティーを狭めておきたい人が多いと言えるでしょう。
日本で唯一の総務専門誌『月刊総務』を発行する株式会社月刊総務が、全国の総務人事担当者を対象に「Z世代のマネジメントについての調査」を行いました。その結果は、半数以上がZ世代のマネジメントは難しいと回答しています。
従来の世代とは異なる価値観を持っている人が多く、世代間ギャップを感じる人が多いのです。Z世代を上手くマネジメントしていくには、今の時代に合った手法を取り入れ、Z世代に寄り添っていくことが必要だと言えます。
世代間ギャップはどの時代にもあることですが、その中でもZ世代は、これまでの世代とは全く異なる価値観を持っていると言われます。そのため、従来の指導方法ではうまく育成できないケースも多く、ハラスメント扱いされてしまったり、早期離職したりする傾向が高いようです。Z世代の成長を促すためにはまず良好な関係を築くことが必要ですが、そのためには、Z世代の特徴や心理を理解しなければなりません。これから紹介するZ世代の特徴7つを理解し、効果的なアプローチを考えていきましょう。
Z世代は、コストパフォーマンス・タイムパフォーマンスを重視する傾向にあります。具体的には、大学の授業録画や映画を倍速で見る、動画の閲覧は1分未満のショート動画を好んで視聴するなどがあげられます。特に、自分が使ったお金や時間に対するパフォーマンスの高さを求めます。また、仕事においても同様に「無駄」を嫌うため、非効率と感じた業務は行わないケースが多いです。
Z世代は、最低限の労力で、高いパフォーマンスを発揮することに価値を感じており、いかに効率よく進められるかを常に考えて行動しています。
Z世代は、大企業の倒産やM&Aなどを当たり前のように目にしてきたため、日本が右肩上がりに成長した時代の感覚はありません。終身雇用の感覚もないことから、企業が自分の人生を守ってくれるとは思っていないでしょう。また、未来の日本や国内企業が、世界の中で著しく成長していくような明るいイメージを持てない人も多くいます。その結果、企業への期待感や忠誠心は低く、個人の「やりがい」「充実感」などの精神的な報酬を重視する傾向にあるのです。
Z世代は、高収入を得られる仕事でもやりがいを感じなければ就職しようとは思わず、好きなことや自分らしさを優先して意思決定をする傾向があるようです。
Z世代は、価値観が合わない仕事や組織とは距離を置く傾向があります。特に、上司からの価値観の押しつけを嫌う人が多いでしょう。組織が合わないと感じると、無理に馴染もう・改善しようとはせず、最低限の仕事のみをこなしながら静かに退職できる機会を伺います。中には「価値観が合わない」「居心地が悪い」と感じたら、会社の都合は考えず、すぐ離職してしまう人もいます。
Z世代は丁寧な指導を求める傾向が強いようです。デジタル化の進行とともに育ってきたZ世代は、ネットを活用してさまざまな情報を集め「正しいか正しくないか」を判断する能力に長けています。
そのため、根拠のない指示や公平ではない評価を嫌う人が多く「とにかく会社の指示や命令には従うべき」といった古い考え方は通用しません。Z世代の部下に指示や命令を出す際は、目的や根拠を示しながら丁寧に指導する必要があります。
Z世代は、承認欲求が高い傾向にあるようです。幼い頃からSNSを活用してきた世代で、自分が属するコミュニティを大切にしています。
「コミュニティの中で認められたい」「共感してほしい」という欲求が強く、SNSで「いいねを多く集めたい」と同じ感覚で、会社や上司にも承認を求めるのです。自分がどう評価されているかに敏感であるため、上司としては否定ではなく、肯定できる部分を探す必要があるでしょう。
Z世代は、他の世代と比べて社会問題や環境問題に強い関心を持っている傾向にあります。10代の多感な時期に、長い日本経済の低迷や東日本大震災を経験したことが原因でしょう。また、2015年9月に開催された国連サミットでは「SDGs」が採択され、学校教育や経済活動など、さまざまな場面で「サステナブル」との言葉を見聞きしていることも一因だと考えられます。
長期的な不況が続く中で育ってきたZ世代は、保守的で将来の安定を強く願う傾向にあります。つまり、何かに挑戦して失敗するよりも、失敗回避を目指す人が多いようです。
中には「失敗したくない」「無理のない範囲で働きたい」と考え、出世を望まない人も多くいます。また、出世欲がある人は、同じ職場に長くい続けることに固執せず、キャリアアップのためならあっさり転職してしまうケースも多々あります。
Z世代と良好な関係を築きながら育成するには、特徴や個性を考慮したアプローチをする必要があります。これから紹介する指導法を参考にし、Z世代の定着率を保ちながら会社の戦力となる人材に育てていきましょう。
Z世代を上手く育成するためには、業務の目的や理由を明確に伝える必要があります。彼らなりの常識や価値観で行動しているため「なぜそうすべきか?」という、納得できる情報が大切なのです。目的や理由が不明確だと、正しくない指導法だ、効率の悪い業務だなどと感じられてしまいます。Z世代を育成する際には「ルールだから」「そういうものなのだ」と理由もいわずに価値観を押しつけるのではなく、納得してもらえる根拠や理由をはじめに示しましょう。
Z世代の育成に携わる際は、それぞれの価値観を理解・尊重しなければなりません。相手の価値観を否定する言動をすると、上司と部下の間に溝が生まれ、関係性は悪化してしまうでしょう。Z世代の社員は基本的に怒られることに慣れておらず、面倒ごとに巻き込まれたくないと思っています。最悪の場合、価値観を否定した上司とは距離を取り、上司と部下のコミュニケーションが一切なくなってしまう可能性も考えられます。Z世代を育てるうえでは、相手の価値観を理解し、一人ひとりに合った指導法を実践しましょう。
Z世代を早期に育成したいなら、一人ひとりにメンターをつけて、上司から積極的に話しかけることが大切です。幼い頃からインターネットを活用してきたZ世代は、自分の素をさらけ出すことにリスクを感じています。そのため、悩みや自分なりの意見があっても、なかなか自分からアクションを起こせないでいるのです。Z世代と良好な関係を築きながら成長を促すには、疑問や悩みを気軽に相談できる環境をつくることが必要です。週1回のショートミーティングやランチでの雑談などを通して、積極的に関わっていく姿勢を心がけましょう。
Z世代を育成する中で、定期的なフィードバックは効果的です。承認欲求が強く「認められたい」と感じているZ世代は、職場で自分がどう評価されているのか不安なようです。そのため、定期的にフィードバックする機会をつくり、成長を評価してあげる必要があります。小さな成功体験を積み重ねる機会を与える中で、自己肯定感を高めてあげましょう。
Z世代は、多様な価値観を尊重する柔軟性がありますが、その反面、主体性が欠ける傾向にあると言われています。上司から指示を出すばかりでは主体性が育たず、自分で積極的に行動できる人材には育ちません。Z世代を育成する際は、定期的な1on1ミーティングで今後の目標や5年後、10年後のありたい姿を考えさせることが必要でしょう。目標やありたい姿が明確になれば、自主的に行動しやすくなり、積極性のある人材へと成長していくでしょう。
Z世代は、柔軟な考え方を好む傾向があるため、感情的に指摘したり価値観を否定するのは避けた方が良いでしょう。モチベーションが下がるだけでなく、不信感や反発から早期離職に至る可能性もあります。これから紹介するNGな指導方法を参考に、効果的にZ世代の成長を促していきましょう。
「Z世代だから」といったレッテル貼りは、個人を尊重しない上司・会社だと思われるため避けるべきです。価値観が合わないと感じてしまうと、すぐ離職する人も出てくるでしょう。短所やネガティブ要素の指摘だけでなく、強みや長所を承認する際にも「Z世代」といった言葉は使わない方が良いでしょう。
基本的に、Z世代に古い価値観や考えを押しつけるのはNGです。上司である自分の時代では当たり前の方法でも、Z世代からすれば非効率に思えたり理解できなかったりするケースがあるからです。たとえば「若いうちは残業して当たり前だ」「休日出勤をしないと出世できないぞ」などがあげられます。Z世代を育成する際には、時代や価値観の違いを理解したうえで関わっていきましょう。
Z世代に厳しい叱責やダメ出しは、極力控えた方が良いでしょう。基本的に、叱られることに慣れていない人が多いからです。やる気を起こさせるどころか、逆に、仕事へのモチベーションを失ってしまうでしょう。また、昨今は転職へのハードルが低いため「わざわざ叱責される上司のもとで働く必要がない」と思われる可能性もあります。Z世代に対しては、叱責による古風な指導は避けた方が無難でしょう。
これまで見てきたように、Z世代に対して、従来からの指導方法を実践していると不信感や嫌悪感を抱かれてしまうことが多いでしょう。最悪の場合、距離を置かれるだけでなく、早期離職に至る可能性もあります。良好な関係を築きながら自主的な成長を促すためには、Z世代の価値観や個性を尊重した育成方法を実施していきましょう。
株式会社アイルキャリアは、お客様ごとに抱える課題や目標に合わせたオーダーメイドプログラムで”学び”を提供する研修会社です。官公庁・自治体から上場企業、医療法人や学校法人まで様々なお客様に対して、ご要望と時流をふまえた必要な”学び”を、新人から管理職まで幅広く提供し、組織の人材育成を支援しております。特徴としては、その研修で達成したい目標(行動変容)の先にある成果、パフォーマンス(行動変容の結果得らえるもの)までを意識してプログラムを作成することにあります。