昨今、エンゲージメント向上に取り組む企業が増えています。理由として、離職率の低下や優秀な人材の確保、顧客満足度や生産性向上につながるという研究結果があり、期待されているからです。
そこで、この記事では、エンゲージメントの意味や高める方法について詳しく解説します。
エンゲージメントとは、「契約」「約束」「誓約」などを意味する言葉です。使う場面で意味は異なりますが、「深いつながりを持った関係性」を表す言葉といえます。ビジネスシーンにおいては、「個人の成長や働きがいを高めることは、組織の価値を高める」「組織の成長が個人の成長や働きがいを高める」という考え方をします。
上記のように、企業と従業員のつながりが強い状態を、人事領域においては「エンゲージメントが高い」といいます。
エンゲージメントと意味が混同されやすい言葉に、ロイヤリティと従業員満足度があります。
ロイヤリティとは、忠誠心や帰属意識という意味があり、従業員の企業に対するコミットメントを指します。また、従業員満足度とは、従業員が待遇や環境、報酬に対してどれだけ満足しているかをいいます。
エンゲージメントとロイヤリティ、従業員満足度では、結びつきの方向性が大きく異なります。エンゲージメントは、企業と従業員が互いに関与することで結びつきを強めていくものであるのに対して、ロイヤリティは、従業員が組織に対して忠誠心を持って行動するという上下の関係性を指します。
また、従業員満足度は、会社の処遇や環境に対する評価であり、企業側の取り組みに応じて変わる指標となります。
企業におけるエンゲージメントの定義としては、従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントの2つがあります。企業価値を高め、これからの競争市場で勝ち抜いていくためには、どちらも重要な要素とされています。
従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントとは、企業と従業員のつながりの強さ、信頼の度合いを指します。ここでの「エンゲージメントが高い」とは、従業員が企業に対して愛着や思い入れ、誇りなどを持っている状態です。結果、従業員の定着率が向上し、業績の向上につながると期待されています。
顧客エンゲージメント
顧客エンゲージメントとは、企業とその顧客との親密度を指します。ここでの「エンゲージメントが高い」とは、企業は顧客に寄り添う姿勢があり、顧客は企業に対して愛着・思い入れ・親近感などを持っている相思相愛の状態をいいます。結果、企業は価格競争に巻き込まれることなく売上や利益を向上することが期待できます。
エンゲージメントと企業業績は相関関係にあるとされています。エンゲージメントが高ければ、従業員の貢献意欲が増し、顧客満足度の向上につながります。結果、企業業績にプラスに寄与するものとされています。
以下では、企業においてエンゲージメントが重要視されるようになってきた理由、背景について、詳しく解説します。
近年、大手企業を中心に、終身雇用や年功序列といった従来の人事制度から、成果主義やJOB型雇用制度へと移行しています。こういった雇用環境の変化から人材の流動化が進み、従業員の離職率の増加に対する懸念が高まっています。
雇用環境の変化が進むなか、転職に対する心理的なハードルも低下しました。キャリアアップ志向が強い人材や、理想の働き方やライフスタイルを求める人材は、自分に適した職場を求めて転職することが一般的になりつつあります。
そのため、離職率の低下や優秀な人材の確保を目的として、高いエンゲージメントを維持する取り組みを行う企業が増えてきました。
顧客エンゲージメントを高めることで、顧客に選ばれる企業になれます。理由として、高い顧客エンゲージメントは、購買行動を促し利益の向上に寄与するからです。
また、エンゲージメントが高い従業員は、自社のミッションやビジョンに共感しており、貢献意欲も高くなります。
リピート購入やサービスを継続する顧客や、貢献意欲の高い従業員が増えることで、企業の価値は総合的に向上します。
これまで見てきたように、企業においてエンゲージメントが重要であることは、ご理解いただけたことと思います。エンゲージメントを向上させることで、企業と従業員にさまざまなメリットをもたらし、企業価値の向上につなげていきましょう。
以下では、エンゲージメント向上によって得られる、具体的なメリットについて解説します。
従業員エンゲージメントが高い状態とは、従業員の会社に対する愛着度が高まっていることをいいます。会社に対する愛着度が高い従業員は、就職・転職を考えている知人や身内の人間に対して「自分の会社、職場を紹介したい」そう考えることが多いようです。
また、従業員エンゲージメントが高いことは、就活中の学生にも好意的に受け止められ、新卒採用においても優位性の確保につながるとされています。
従業員エンゲージメントが向上すると、離職率は低下するとされています。
従業員エンゲージメントが高い状態は、従業員が働きやすさや仕事へのやりがいなどを感じ、長く働き続けたいと考えていることをいいます。単に、労働条件のみに満足している訳ではなく、その会社で自分が働く価値を感じている状態です。
その結果、優秀な従業員の早期離職を防ぐことにつながり、社内に経験値やノウハウが蓄積され、熟練者の定着促進に繋がることが期待できます。
エンゲージメントが高い顧客は、その企業に厚い信頼を寄せており、満足度の高い状態にあります。顧客満足度が向上すれば、顧客のリピート購入やサービス継続の可能性が高まります。
顧客がファン化されることで、口コミやSNSによるプロモーション効果が発生することも期待されます。
エンゲージメント向上は、顧客との確固たる信頼関係構築につながり、他社の商品・サービスでは得られない価値の提供が可能になるでしょう。
これまで挙げてきた「人材の確保」「離職率の低下」「顧客満足度の向上」というメリットが発揮される結果、企業は高額な費用をかけて広告や宣伝をしたり、競合他社よりも安い値段で商品、サービスを提供したりする必要性がなくなり、売上・利益の向上につながります。
売上・利益の向上は企業にとって重要な目標ですが、従業員エンゲージメント・顧客エンゲージメントの向上はそれに直結する要素になり得るでしょう。
ここまでエンゲージメントを高めることのメリットを見てまいりましたが、企業がエンゲージメントを高めるためには、さまざまな策を講じなければなりません。
以下では、従業員エンゲージメントを向上させる方法について詳しく解説します。
従業員エンゲージメントを高めるための具体的な施策として、アンケート調査やヒアリング実施による現状把握が重要となります。このような調査は、エンゲージメントサーベイと呼ばれ、「仕事にやりがいを感じているか」「仕事に誇りを持っているか」「仕事では何を重視しているか」などを質問するのが一般的です。
エンゲージメントサーベイを通じて、組織の課題解決に向けた最適な施策の実施が可能となります。
企業理念やビジョンの発信も、従業員エンゲージメントを高めるために重要です。
企業理念とは、企業の存在意義や根本的な価値観、遵守すべき原則を示したもの。ビジョンとは、具体的な将来像を描き、その達成に向けて組織全体が目指すべき方向性となります。
従業員エンゲージメントの向上には、企業理念やビジョンに対する理解・共感が必須です。そのため、従業員にわかりやすく企業理念やビジョンを発信する「インターナルコミュニケーション」を積極的に行う必要がでて参ります。
企業理念やビジョンへの共感が深まれば、従業員は会社に対し愛着を感じ、従業員エンゲージメントは向上するでしょう。
労働環境は、従業員の企業に対する貢献意欲に影響を与えます。たとえば、時間外労働が多かったり、有給休暇の取得が事実上困難であったりする場合、従業員の不満やストレスは蓄積していくでしょう。働きやすい職場環境の整備は、従業員の能力を最大限発揮させることにつながり、結果、仕事に対するやりがいや誇りを高め、エンゲージメント向上にも寄与します。
マネジメント層の人材は、部下の能力やモチベーションを引き出し、活躍できる環境を整える重要な役割を担っています。人事評価においても、部下が生み出した成果や努力、ポテンシャルを公平公正に判断する重要なポジションでもあります。従業員は、自らの頑張りが正当に評価されていると感じれば、おのずとエンゲージメントも向上するでしょう。
そのため、組織の中枢、重要な役割を担うマネジメント層に対し、コーチングやトレーニング、フィードバックなどに関する教育を行うことは、非常に効果的です。
従業員エンゲージメントを高めるうえで、職場の雰囲気を良好に保ち、円滑な人間関係を維持することは重要です。従業員が仕事に関する悩みや不安などについて、上司や同僚に気兼ねなく相談できる環境だと感じれば、従業員は安心し、仕事に対するやる気やモチベーションを維持しやすくなるからです。活発なコミュニケーションは仲間意識を醸成し、従業員エンゲージメントの向上につながります。
企業は、従業員間のコミュニケーションを活性化し、帰属意識の向上を図ると良いでしょう。
顧客エンゲージメントとは、商品やサービスを提供する企業と顧客との間の信頼関係をいいます。そのため、顧客エンゲージメントを向上させることで、他社との差別化が図れます。
顧客エンゲージメントの向上には、まず現状の分析が必要です。顧客データを集め、分析した後で、カスタマージャーニーごとの対策を考えましょう。
以下、顧客エンゲージメントを高める方法について、詳しく解説します。
顧客エンゲージメントの向上のために行うべき最初のステップは、顧客データの収集です。顧客目線に立ち、顧客の状況や心理を正しく理解するためには、顧客情報を把握できるデータを入手することが重要です。
顧客の本音を探る方法として、SNS上の投稿を分析するのも有効な手段の1つとなります。
顧客データを集めた後は、カスタマージャーニーマップを作成する必要があります。カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品を認知してから購買にいたるまでの体験プロセスを、時系列のストーリーで図示したものです。カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の行動パターンや感情といった消費者行動を可視化し、顧客との接点を明確にできます。
各プロセスにおける顧客心理や行動、タッチポイントを分析し、問題や課題を洗い出すことで、解決するための施策を実施できます。
顧客エンゲージメントの向上において、アフターフォローは非常に重要です。商品やサービスを購入してもらったら終わりではなく、アフターフォローも視野に入れて対策することで、顧客との間に双方向性が生まれ、それとともに信頼関係も深化します。
SNS上で顧客からの質問に回答するなど、自社に対する親近感や特別感を抱いてもらう取り組みも効果的でしょう。
企業におけるエンゲージメントは、従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントの2つがあり、互いに関与しあうことで相乗効果が得られるものです。従業員エンゲージメントを高めることで、離職率の低下や優秀な人材の確保が期待できます。
顧客エンゲージメントを高めることで、顧客満足度の向上や、SNSや口コミによるプロモーション効果が期待できます。
厳しい競争市場で勝ち抜いていくために、積極的に従業員と顧客のエンゲージメント向上に取り組み、企業価値を高めることが必要な時代といえるのかも知れません。
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