自己実現を果たすキャリアとするためには、明確な目標設定が不可欠です。キャリアの道のりは多岐にわたりますが、具体的なゴールを設定することでその道筋は明確になります。この記事では、キャリアゴールの重要性と効果的な目標設定の手法、実際のゴール設定事例を紹介します。キャリアゴールが何であるかを理解し、自分の職業人生にどのように活用するかを考えてみましょう。
キャリアゴールとは、自身で設定した将来の理想像を実現するためのプランの最終地点、あるいは最終目標、目的地のことです。この場合の「将来の理想像」とは、将来やりたい仕事や働き方だけでなく、生き方から人物像まで広範囲を含みます。ここでは、キャリアゴールと混同しやすい用語の違いについて解説します。
キャリアパスとは、組織におけるキャリアの積み方や手順を示したものです。一般的には、自分がやりたい仕事をしたり、ポジションについたりするために必要なスキルや経験をどのような順番で習得すべきか明示されています。
つまり、キャリアパスはキャリアゴールを実現するための通過点であり、企業や組織によって提示されているという点が特徴です。
キャリアプランとは、将来の経歴を戦略的に計画する過程のことです。まずは、自分が理想とする未来像(=キャリアゴール)を明確にして、それを実現するために必要なスキルや経験を把握します。そして、そのスキルや経験を習得するための具体的な行動計画を立て、習得するためのステップを考えることが必要です。
言い換えると、キャリアプランはキャリアパスと同様に、キャリアゴールの通過点であると言えますが、キャリアパスとは異なり与えられるものではなく、自ら計画を立てる点が異なります。
キャリアビジョンとは、職業生活におけるなりたい姿や理想像のことをいいます。キャリアビジョンの「キャリア」は、「経歴」や「職務経験」など狭義のキャリアを指します。「未来の理想像」であるキャリアビジョンと数字を足したものが、キャリアゴール「最終目標」や「目的地」になります。ビジョンは定性的なものであるのに対して、ゴールは定量的なものです。計画を立て、目標を達成するための道筋や期限を考え、努力を継続した結果がキャリアゴールとなります。
つまり、キャリアビジョンをイメージする際には、定性的かつ定量的にイメージすることが大切です。
まずは、アイル・キャリアが実施しているタイムマネジメント研修の流れをご紹介します。今回は、標準1日コースのプログラムを例として挙げますが、ご要望に合わせて研修内容の追加・変更も可能です。
キャリアゴールの設定は近年重要視されており、それは下記の3つの理由によるものです。
日本で当たり前だった終身雇用制度や年功序列制度が崩壊しつつあります。そのため、定年まで1つの会社に勤めるのではなく、転職を視野に入れたキャリア形成を考えることが必要になってきました。また、欧米の国々のように実力主義・成果主義を謳う企業が増えていることからも、年齢や実務経験の年数よりも、スキル・知識・これまでの成果がより評価される時代に変わりつつあります。
このような時代であるため、会社にキャリアを委ねずに自身で主体的にキャリアゴールを設定し、それを実現するための行動計画を立てることが重要になってきました。
「人生100年時代」と言われている今、働き続ける年齢がどんどん上がっており、定年がゴールではなくなりつつあります。言い換えると、生涯現役でいることが求められる時代に突入したということです。個人が自分のスキルや能力をブラッシュアップして、自ら能動的に長期にわたるキャリアを築いていく姿勢が求められます。
現代はVUCAの時代と言われています。VUCAとは、下記の4つの英単語の頭文字を組み合わせた言葉です。
ビジネスだけでなく、日常生活においてもどんどん環境が変化し、将来の予測が難しい時代になっています。このような時代であるからこそ、キャリアゴールの設定が重要です。世界情勢や経済など外的な要因によって、これまで求められていた働き方・スキル・経験が求められなくなってしまう可能性があります。しかし、だからこそ、そのような事態を想定し、学び直しに取り組み、VUCAの時代を生き抜けるように準備を整えておくことが必要なのです。
それでは、実際にキャリアゴールを下記3つのステップを踏んで、設定してみましょう。
まずは、自己分析を通じて、過去の職務から得られた経験や身についたスキルについて振り返りましょう。自己分析を行う際は、できる限り客観的に行うことがポイントです。自身を客観視できないと自分自身を正しく評価できず、適切なキャリアゴールを設定することが難しくなってしまうからです。マインドマップやモチベーショングラフ、あるいはSWOT分析などのフレームワークを活用しながら下記の項目について考えてみてください。
過去の振り返りが終わったら、次は、現在にフォーカスします。下記の点について考えてみてください。
また、同僚や上司など第三者からの視点や評価も加えることで、自分が気づかなかった強みや弱みを知ることができる可能性があります。ぜひ第三者からのフィードバックもキャリアゴール設定に役立ててください。
過去や現状に対する自己分析をもとに、キャリアゴールを設定します。キャリアゴールを設定したら、それを実現するための計画や実現するまでの期限について考えてください。いまの時代は、短期目標を設定して、スモールステップでキャリアゴールを実現させようとすることがおすすめです。キャリアゴールや、それを実現するためにやるべきことが思いつかない場合は、自社や他社の同じ業種の人のキャリアパスを参考にすると、イメージしやすくなるでしょう。
それでは次に、キャリアゴールを設定する上で、留意すべき点について解説します。「SMART」を意識しながら設定することがおすすめです。「SMART」とは下記の5つの英単語の頭文字を取ったものです。
それぞれの要素について詳しく解説します。
“S”は”Specific”を表し、「具体性」を意味します。下記のようにできる限り具体的な目標を作成してください。
例 「スタートアップ企業の製品開発チーム管理職に就き、プロジェクトを成功に導きたい。」
目標が具体的であるほど、達成に必要なステップをイメージ、理解することができるようになるでしょう。
次に、”M”は”Measurable”を表し、「測定可能」という意味です。キャリアゴール達成に向けてスモールステップで小さな目標を立てることを説明しましたが、それらの目標を達成するために自分が前進できているのかを知る上で、数値として測定できる目標を設定することが望ましいです。
また、マイルストーンを設定することをおすすめします。必要に応じて見直したり、修正したりすることが可能となるからです。マイルストーンを達成したら自分にご褒美をあげるようにしましょう。そうすれば、目標達成に対するモチベーションがさらに高まるでしょう。
“A”は”Achievable”の”A”で「達成可能」を意味します。キャリアゴールを設定する際には、努力すれば実現が可能な目標を設定しましょう。実現性を感じられれば、モチベーションや集中力をキープしやすくなります。
そして、目標達成に向けて行動に移す前に、事前に準備がどの程度必要な目標なのかを見極めることも大切です。
そして、”R”は”Relevance”「関連性」です。キャリアゴールや、それを達成するために設定するスモールステップの目標を決める際には、自分の価値観や最終的な目的に「関連性」がある目標であるかどうかを検討する必要があります。下記の問いを自分に問いかけながら関連性のあるキャリアゴールを設定しましょう。
最後の”T”は”Time-based”の頭文字で「期限」を意味します。キャリアゴールを設定するときには、いつまで達成したいのか期限を設定します。期限を設定することで、達成に向けてモチベーションがさらに高まるでしょう。また、物事の優先順位を決めやすくなります。
もし期限までに目標を達成できなかった場合は、その理由を考え、同じ失敗を繰り返さないようキャリアプランを再考してみてください。
キャリアゴール設定にあたって「SMART」は、目標達成に必要なステップや到達するために重要で、進捗状況を確認するためのフレームワークであると言えます。つまり、「SMART」を活用することで、効率的に目標達成できる可能性が高くなるということです。「カスタマーサポートからデザイナーへ異業種の転職を果たしたい」「ITエンジニアになりたいが、何から始めれば良いのかわからない」など、具体的なキャリア目標が出てきた際、「SMART」を活用することをおすすめします。
SMARTゴールを用いる前のキャリアゴールの事例を1つ紹介します。
ある20代半ばの人が「自社製品が培った技術力で、IT後進国の企業との架け橋となる」といったキャリアゴールを設定しました。これらのキャリアゴールは下記の点において漠然としています。
これは自分自身の解像度がかなり低い状態、つまり、自己分析がしっかりとされていない状態であるということです。これでは実現性のあるキャリアゴールはもちろん、それを達成するためのスモールステップの目標も描くことは難しいでしょう。
それでは、実際に「SMART」を用いた具体事例を2つ紹介します。
まずは1つ目の事例です。「開発言語であるPythonをマスターして、社内で3年間実務経験を積み、ITエンジニアとして他社に転職する」という目標についてSMARTを用いて検証してみましょう。
このようにSMART全ての要素を満たしていることから、このキャリアゴールはSMARTに則していると言えます。
次は「マネージャーに昇格するため、3ヶ月間で必要なトレーニングを完了し、来期末にそのポジションに応募する」という事例についてです。SMARTに則しているか検証してみます。
この事例についてもSMART全ての要素を満たしているため、SMARTに則したキャリアゴールであると言えるでしょう。
最後に従業員がキャリアゴールを設定する上で、企業が支援できることについて紹介します。
従業員へのキャリア開発支援が、キャリアゴール設定に役立ちます。キャリア開発支援とは、キャリアゴール達成に必要なスキルや知識の習得、あるいは自社内の職務経験プロセスを設計したものです。具体例は下記を参考にしてください。
従業員が目指すキャリアゴールの実現に役立つかどうかという点を重視し、社内の仕組みや制度を整備することが大切です。
メンター制度を導入することで、キャリアプランを作成したり、実現可能な目標設定を策定したりする機会を設けられるでしょう。メンターには、社会人としての在り方やキャリアに対する考え方などに対して幅広い視点からメンティの成長をサポートできる人物が適しています。このようなメンターがいれば、メンティも自身のメンターがロールモデルになるためキャリアプランを作成しやすくなるでしょう。
ジョブ型雇用制度を導入することもおすすめです。ジョブ型雇用制度を導入することで、企業が求める人材が、職務記述書に明文化されて採用されることになります。つまり、応募者のこれまでの実績や保有スキルを業務に振り分けて評価し、高い専門性を持つ人材を獲得できるようになるということです。従業員は、キャリアアップのための道筋が明確になるため、キャリアゴールを設定しやすくなるでしょう。
この記事では、キャリアゴール設定の重要性やキャリアゴール設定のためにやるべきこと、具体的な事例などについて紹介しました。
キャリアゴールの設定は、自分自身の成長と成功のために必要不可欠です。また、キャリアゴールの設定は一度きりではなく、時に見直しを行い、常に自分自身の成長に合わせて更新することも求められます。自分だけの目標を設定し、その実現に向けて努力することで、理想のキャリアにたどり着けるようになるでしょう。
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